大阪・道頓堀には、誰もが一度は見たことがあるであろう名物サインが存在します。その名は「グリコサイン」。道頓堀川沿い、戎橋(えびすばし)を渡る途中に、きらびやかなネオンとともにそびえ立つその看板は、「道頓堀のシンボル」、「大阪の顔」とも言われています。大勢の観光客がこの看板を背景に「同じポーズ」で記念撮影をしています。そんなグリコサインには、90年以上の歴史と大阪人ならではのユーモア、そして夢とエネルギーがぎゅっと詰まっています。
グリコサインとは、お菓子メーカー「江崎グリコ株式会社」の広告看板です。初代グリコサインは1935年(昭和10年)、道頓堀に設置され、以来数度のリニューアルを経ながら、今(2024年現在)六代目となっています。看板には、グリコのキャッチフレーズ「一粒300メートル」の象徴ともいえる、両手を高く掲げ、ゴールテープを切って走るランナーが描かれています。このポーズは誰もが自然と真似したくなる、いわば「みんなでゴールを感じる」象徴です。
夜になると、グリコランナーは数十万個のLEDの光で輝き、後ろには大阪城や通天閣、世界遺産の富士山など、時代によって変わる日本の名所が背景として映し出されます。看板下には「Glico」と大きく文字が浮かび上がり、道頓堀の賑わいと相まって、いつも多くの人がカメラやスマートフォンを手に集まり、思い思いの「ゴールインポーズ」をとりながら撮影しています。
記念撮影スポットとしての人気には理由があります。まず、川面に映るグリコサインは、昼と夜でまったく違う表情を見せます。昼は鮮やかな色合いとともに、観光客や地元の人々の会話と賑わいが溢れ、夜にはネオンが一層美しい道頓堀の雰囲気を醸し出します。戎橋の上に立ち、グリコランナーと息を合わせる体験は、大阪旅の“定番”であり、いつの時代も人々の思い出を彩ってきました。
何世代にもわたり愛され続けるこの看板は、単なる広告を超え、大阪を象徴するランドマークとしての役割を果たしています。時代の移り変わりとともに進化しながらも、人々に“ゴールの感動”や“元気”を与え続けるグリコサイン――それはまるで、大阪の街が常に前向きに走り続けることを、私たちにそっと伝えているようです。